バフェット氏、コカ・コーラ株を売却か!?

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スポーツ紙みたいなタイトルですみません。まだ売却してないです、バフェット氏のコカ・コーラ (KO)。え?「まだ」ってことは・・!?

まずP&Gの売却について

さかのぼること先日の5月16日。バフェット氏がCEOを務める投資会社、バークシャー・ハサウェイが、アップル株 (AAPL) を約1,000億円分、新たに保有したことを開示。そのニュースは世界の投資家に驚きを以って迎えられました。その影でひっそりと、という訳でもありませんが、あまり目立つことなく、バークシャーの保有するプロクター・アンド・ギャンブル株 (PG) のほぼ全てが売却されたのです。

プロクター・アンド・ギャンブルという社名に馴染みのない方も、P&Gとの略称を言えば、お分かりになるのではないでしょうか。洗剤や髭剃りで有名な日用品メーカーですね。そして、長期投資家にとってP&Gと言えば、鉄板のバリュー株です。60年にも渡って連続で増配しつづけ、現在の配当率は3.29%。営業キャシュフローは堅調に推移しており、株価は長期に渡って安定した増加傾向を示しています。

バークシャーにおいても、一時は保有額の3番目に位置し、ポートフォリオの10%以上を占めることもありました。 ところが、バークシャーは2008年から徐々ににP&Gを売却しはじめ、2015年12月末にはポートフォリオの4.17%まで減少。ついに今回、ほぼ全てを売却するに至ったという訳です。

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バークシャー株 (BRK) は過去50年の平均リターンが約20%と、S&P500指数の平均約10%を大きく上回ります。ただ、20世紀の熱狂の時代は過ぎ、2000年以降は世界的に成長率は鈍化しています。過去10年に限定すれば、バークシャーの平均リターンは約10%です。S&P500指数の約7%を上回っているものの、以前ほどの勢いではありません。

こうした中、すでに成熟してしまった銘柄はポートフォリオから外していき、成長可能性を秘めた新銘柄を取り入れるのは、当然のことでしょう。もともとバフェット氏が大人買いするのは、非常に優良な企業でありながら、世にその事が知られておらず、従って割安に放置されている好銘柄です。それを買って、じっくり育てる投資法なのです。そのため長期保有が前提ですが、永久に保有するとは限りません。

ある銘柄について10年保有するつもりがないのなら、10分たりとも保有しようと思うべきではありません。

これは裏を返せば、たとえ既に保有していても、「10年保有する気が失せたら、直ちに手放す」ということなのかもしれません。

こうした目でP&Gを見てみます。高配当ではありますが、配当性向は88.3%と高く、増配の余地が少なくなってきています。30年分のチャートを見ると、ここ10年の株価上昇は鈍化しています。配当再投資で計算した過去10年のリターンは、複利計算で6%台です。好リターンを維持したいバークシャーとしては、減資していく対象としたのも頷けます。

勘違いしないでいただきたいのですが、一般の個人投資家がP&Gを保有することを否定している訳ではありません。一般人にはバフェットのように年率20%を何十年も出し続けるなんて無理です。長期保有をベースにするなら、良くて10%でしょう。その基準でいくと、我々はバフェット氏とは違い、依然としてP&Gが鉄板銘柄でありつづけると思います。

コカ・コーラもいずれ売却するのだろうか?

さて、ここでコカ・コーラ (KO) の話に戻ります。コカ・コーラもまた鉄板のバリュー株です。ただ、成長率はP&Gほど鈍化してはおらず、配当再投資で過去10年平均のリターンは約10%です。バフェット氏はコカ・コーラの筆頭株主でもあります。しかしながら、気になる点はいくつかあります。

売っておけば良かったとの発言

1998年頃にコカ・コーラ株は、過去最高値を付けてから徐々に下げていきました。その後、バフェット氏は「コカ・コーラ株はあの時売っておけば良かった」とも発言したようです。コカ・コーラがバフェットのトレードマーク化しているからといって、いつまでも保有しているとは限りません。

炭酸飲料の先行きに暗雲

コカ・コーラのグローバル売上数量の70%を炭酸飲料が占めています。しかし、世界的な嗜好は、炭酸飲料からミネラルウォーターへとシフトしており、炭酸飲料の売上げは減速しています。ペプシコのように炭酸飲料以外の食品へシフトしていかなければ、コカ・コーラの立場は厳しくなるでしょう。

今後の更なる世界的な健康嗜好を裏付ける活動として、国連の「SDGs 17項目」があります。これは2015年9月に採択された「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals) の17項目です。これらは2030年をゴールとして定めた目標ですが、その中に

目標3: あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。

というのがあります。

今や発展途上国でも医療の普及がある程度進み、世界の平均寿命は70歳に到達しました。すると今度は、世界中で成人病の克服が課題となってきているのです。炭酸水は先進国では売れなくなってきていますが、まだまだ発展途上国があるという考え方は、通用しないかもしれません。

食品銘柄としてはクラフト・ハインツにシフトする可能性

バークシャーのポートフォリオの中で、別の食品銘柄であるクラフト・ハインツ (KHC) が割合を増やしており、現在のトップ銘柄です。KOからKHCに移行していく布石、と読めないこともありません。全くの憶測でしかありませんが。

すぐに売却へ動くことはないと思う

これらの懸案が的を射たものだったとしても、明日にでもKO売却へ舵を切るということは無いと思います。なぜなら、

  • 現時点でコカ・コーラ (KO) は、先にも述べたように10%のリターンを出しており、バークシャー株 (BRK) 自身と同程度。急いで手放す理由もない。
  • ウォーレン・バフェット氏の次男、ハワード・グレアム・バフェット氏はコカ・コーラ社の取締役であり、関係は深い。
  • P&Gはバフェット氏が購入して得た銘柄ではなかった。保有していたGilletteがP&Gに買収されたために、P&G株を保有することになった。一方、コカ・コーラはバフェット氏が好んで手に入れた銘柄である。

からです。ただし、バフェットがCEOの位置を後継者に譲り、しかもその後継者がコカ・コーラと良い関係を築けなかった場合、どうなるか分かりません。

もし売却の判断となれば、P&Gのときと同様、毎年少しずつ切り売りしていき、10年くらいかけて完全売却するのでしょう。一度に売却しようとしても、規模が大きすぎて市場に買い手が足りませんし、売却した分は、新たな投資先を見つけなくてはなりませんから。

      2016/05/31

 - 米国株