キャピタルゲインとインカムゲイン、どちらがお得?
こんにちは。いなぐらパパです。
投資において、値上がりによる利益のことをキャピタル・ゲインと言います。一方、配当のように都度支払われる利益のことをインカム・ゲインと言います。
キャピタル・ゲインとインカム・ゲイン、どちらがお得なのでしょうか?
投資信託の場合
いまここに、2つの投資信託AとBがあります。どちらも年率リターンは5%です。Aは分配金無しなので、キャピタル・ゲインが5%です。Bは分配金すなわちインカム・ゲインが3%、残り2%がキャピタル・ゲインです。
再投資の手間
Bの分配金は常に再投資することにすれば、AもBも年率リターン5%で一緒ですから、利益は同じです。しかし、Bのほうは再投資を自分でやらなくてはならないので、手間がかかってしまいます。もし分配金がほぼ一定であるなら、分配金を足した額で自動積み立てすると良いでしょう。ですが、基準価額の上昇に従って分配金も増えていきますから、ときどき積み立て設定を変えなくてはなりません。分配金の出る投信Bは、Aに比べてどうしても、手間がかかる分だけ不利です。
課税の違い
税金を考えると、税引きリターンに差が出てきます。
投信AとBをともに10年運用したとします。Aの10年後のトータル・リターンは、( 1.05 ) を10回掛け算して、1.629。つまり、62.9%の利益が得られます。ここで解約すると、キャピタル・ゲインに対して20%課税されるので、62.9% × ( 1 - 20% ) = 50.3% が税引きリターンです。
一方、投信Bは毎年3%の分配金が出された時点で、この分配金に20%が課税されます。従って手取りは 3% × ( 1 - 20% ) = 2.4% です。これを再投資すると、実質の年率リターンは 2% + 2.4% = 4.4% です。10年繰り返すと、( 1.044 ) を10回掛け算して、1.538。これを解約したときのキャピタル・ゲイン課税の計算は少し面倒です。元本と各年の分配再投資とを、別々に計算する必要があるからです。エクセルを使ってちょちょいと計算した結果、税引きリターンは48.9%となりました。
大きな違いはありませんが、分配金の無い投信Aのほうがわずかに有利であると言えます。
分配金を出すファンドの性質
このように、トータル・ゲインのみを考えれば、分配金を出すファンドのメリットはありません。ですが、退職後に分配金を再投資せずに、家計の収入として使うと、自動で毎月お金が入ってくるので便利です。だからなのか、それとも無知につけ込んでいるのか、分配金をウリにしているファンドは結構あります。理解してそれをメリットとして享受するなら問題ないでしょう。
ところが、ファンドはまったく儲かっていないのに、基準額を切り崩しながら分配金を出しているファンドもあります。こうした元本払い戻し型の分配金は課税はされませんが、トータル・ゲインが得られないなら、何のために投資してるのか分かりません。
こうして考えると、全てというワケではありませんが、分配金を出すファンドには手を出さないほうが無難でしょう。
株式の場合
個別株投資をする方は多くの場合、投信よりも高いゲインを狙っているのですから、もう少し高いリターンを前提としてみましょう。
課税の効果
今、配当無しで年率10%値上がりする株式Cと、配当3%で年率7%値上がりする株式Dがあります。先ほどと同じ計算をすると、10年後の株式Cの税引リターンは127.5%、株式Dの税引リターンは123.9%です。複利が効いて、課税による差がより大きくなりました。
では、この場合は株式Cのほうが良いのでしょうか?実際、バークシャー・ハサウェイは、課税の観点から株主の利益を考えて、配当を出さないと言われます。ですが、一般の株式の場合は、必ずしも無配当が有利ではないのです。
連続高配当株のメリット
無配当の株式というのは、多くが高成長中の企業の銘柄です。フェイスブック、アマゾン、グーグルなどが挙げられます。こうした企業は配当を出すよりも、利益を自社のビジネスに再投資して、高成長を継続するのです。高成長ですから、市場の期待は高まり、株価は上がります。値上がり益(キャピタル・ゲイン)が十分にあるので、配当を出す必要がないとも言えます。
しかし、こういう高成長企業も、いつか安定フェーズに入るときがやってきます。その時、市場の期待は薄れて株価は低迷するか、あるいはしばしば、実態価値を上回り過ぎていたその株価は、大きく値を下げることになるのです。結果として高成長株の長期的な平均リターンは、安定割安株の平均リターンを下回ることが、既に分かっています。
一方、いわゆるバリュー株と言われる安定割安株は、株主の魅力を惹きつけるためには、高配当を出し続け、しかも増配し続ける必要があります。ひとたび配当を出すと決断をすることは、今後ずっと経営が安定的に成長し、配当を出し続けられるという自信が必要です。そして実際に連続増配できている企業は、長年に渡って優れた実績を出し続けており、今後とも好業績が期待できるのです。
これは、配当課税のデメリットをはるかに上回る効果です。
まとめ
こうして考えると、投資信託は無分配が良く、個別株は連続増配の高配当株から選ぶのが良い、と言えるでしょう。もちろん、個別のファンド・銘柄については、ケース・バイ・ケースと思いますが、大まかな傾向として、このように結論できるのではないでしょうか。